ミニベロロードレーサー CSiのご紹介

いつも当ブログをご覧いただき有難うございます。
今回は、先日ニューカラーが入荷したばかりの、軽量ミニベロロードレーサー CSi(シーエスアイ)についてご案内いたしますね。

CSiはフルサイズのロードレーサーにも引けを取らない、軽やかで切れのある走行フィーリングが、国内だけではなく海外でも高い評価を頂いているモデルです。
開発者は弊社代表取締役の廣瀬で、製品のリリースまですべて廣瀬が担当したモデルになります。
今回、開発ストーリーとしなかったのは、この記事を書いている僕がTyrellに入社する前のお話なので、廣瀬から聞いたことや、実際の製品から感じる僕の印象を基にこの記事を書いているからなんです。

ではでは、今回も長いですがよろしくお付き合いくださいね!

先ず初めにCSiがどんな位置づけのモデルかなのですが・・・、Tyrellのど真ん中の製品、価格もグレードもTyrell製ミニベロラインアップの中核がCSiなんです。

CSiはフレームの製造を台湾で行い、フレームの品質管理と組み立て工程以降をTyrellのファクトリーで行う「ファクトリーライン」に該当するのモデルとなっています。
詳しくご説明する前に、今回入荷したニューカラーの価格や仕様について、先ずはご案内いたしますね。

◆CSi(シーエスアイ)
 ドロップハンドル シマノ ULTEGRA 2x11s 仕様
 希望小売価格:¥372,900(税込)

 フラットハンドル シマノ 105 2x11s仕様
 希望小売価格:¥326,700(税込)

 フレームセット(フォーク、ヘッドセット、シートクランプ他付属)
 希望小売価格:¥205,700(税込)

 カラー:エボニー&オレンジ ・ マットブラック&レッド
 詳細はTyrellホームページをご覧ください。

マットブラック&レッド
エボニー&オレンジ

◆CSiの特長
詳しく開発のお話をさせて頂く前に、先ずはCSiがどんな自転車なのかご紹介させてください。

1.フレーム重量:1.7kgの高い軽量性

2.軽やかで伸びの良さと切れが有る走行性

3.溶接フレームであることを感じないほどスムージングされ、のびやかなシルエットのスラントフレーム

これだけでは「良く走る軽量バイク」ですよね。
良くあるコンセプトですし、比較対象が沢山ありそうです。

Tyrellのブランドアイデンティティーは、
『製品を通してユーザーの皆様とエモーショナルな体験を共有する事』

つまり、Tyrellのバイクならエモい体験が必ず出来るっていう、Tyrellのお約束な訳ですが、CSiにはどんなエモーショナルが有るのでしょうか?
ご説明してまいりますよ。

◆Tyrell製ミニベロモデルの遍歴について
CSiのご説明をする前に、Tyrellがどのような遍歴でCSiに至ったのかをお話しさせてください。
2013年1月に発売されたFSX以前のモデルは、製品のリリースまですべてを代表取締役の廣瀬が行っていました。CSiも全てを廣瀬が手掛けたモデルとなります。

Tyrellが初期の頃、折り畳み自転車のラインアップは存在せず、全てのモデルがミニベロモデル(非折り畳みの小径車)という商品構成でした。

当時の廣瀬の方向性は、「より軽く、より速く・・・」特に軽さへのこだわりは変態的で、量産車を販売するメーカー製の域を超え、ワンオフで生産されるレーシングマシンの様なモデルも有るほどでした。
耐久性や生産性、採算性よりも「より軽く、より速く。」と・・・

スカンジュウム合金を採用したモデル”Si”の限定車「Si isp」 シートポストとフレームが一体のispは、高い軽量性と低い重心位置を持ち、車体重量は7Kgを下回っていました。
スカンジウム合金製のフレーム、フレーム一体型シートポストを採用した
限定車 「Si ISP406」
軽量、低重心、高剛性と、ミニベロの基準には収まらない高性能バイクでした。

軽量性と高剛性、高いプレミアム感のあるチタンモデル「PK1_406」、そのPK1の走りをコンフォートに振った「PKZ_406」、高い軽量性と剛性を併せ持つ希少材スカンジュウム合金製のフレームを持った「Si_406」、そのSiの性能をエントリーユーザー向けにアルミ合金フレームで可能な限り再現した「SV_406」と、立て続けにニューモデルを発表した経緯が有ります。

当時のTyrellは勢いが有ったというか、廣瀬の「理想の自転車を作りたい。」という気持ちが溢れていた時期だったんだなぁ~って思います。
世の中にそんな自転車有りませんから、コアなミニベロファンから熱いご支持を頂けた事は、現在につながっていると思います。

とにかく軽量で踏んだら踏んだだけグングン走る・・・そんな自転車創りを、わき目も降らず突っ走っていたところから、徐々にお客様からのお声が廣瀬に届き始めます。

特に多かったのは、「もう少し乗り心地をマイルドにしてください・・・。」というご意見です。
「PKZ」や「SV」ではリアフレームのレイアウトを工夫して、振動吸収性が高くなるような設計も意識はしていましたが、もう少しと言ったところだったのでしょうか・・・2008年前後のお話です。

また、市場は451サイズの20㌅が多数販売され始めた時期でもありました。
いち早くチタンモデルを2009年に451化していましたが、Siに代わる新しいモデルの必要性を感じている時期でもありました。
スカンジュウム合金という特殊な素材が使えなくなることも有って、アルミ合金で新しいモデルを製造する事にした廣瀬ですが、アルミ合金でSiを超えるモデルは難しいと考え、当時、ロードバイクで多く採用されていたアルミ合金とカーボンのハイブリッドフレームでミニベロを作ることにしたそうです。
当然ホイールはトレンドの451サイズを採用し、ターゲットの車体重量は7.0kg ※ 以下でした。

そうして企画されたモデルが、今回ご紹介する「CSi」なんですよ。
やっとたどり着きました、ここからCSiのご説明に入っていきます(笑)
諦めずにお付き合いくださいね!

※実際に当時の完成車重量はSRAM redで6.9kgでしたが、現在の完成車重量は8.2kgです。フレーム重量は変わっていないのですが、ホイール、シートポスト等などの標準パーツの重量が少しずつ増加した結果です。

◆CSiの設計要件
1.スカンジュウム合金製のSiと同程度の軽量な車体
2.Siよりも高いフレーム剛性と高い振動吸収性
3.軽やかで切れのある走行性
4.美しいシルエット


これらがCSiの設計要件ですが、項目ごとに解説いたしますね。

要件1.スカンジュウム合金製のSiと同程度の軽量な車体
フレームセットで1.8kg以下が目標値だったようです。
ただ軽いだけではなくって、高性能が担保された高い軽量性・・・その設計のロジックは単純明快です。
当時のロードバイクの設計思想がそのままCSiにも取り入れられました。

先ずはフレーム材ですが、剛性感(剛性値ではありません)を重視して、AL7045(現在はAL7005)を使用し、非常に軽量なトリプルバテッド(1.4-1.0-1.6)のダウンチューブ、ダブルバテッド(1.3-1.0-1.3)のトップチューブを採用しています(数値はチューブの肉厚です)。
ダウンチューブはハイドロフォーミング加工を施して異形チューブとする事で、軽量化によって低下した強度を補っています。
大径薄肉チューブをフレーム材に使用する事は、当時のアルミ製ロードレーサーではトレンドのど真ん中の設計でした。

ダウンチューブのアップ画像。 チューブの断面が特殊な形状なのが確認していただけます。

要件2.Siよりも高いフレーム剛性と高い振動吸収性
要件1.と少し被るのですが、大径で薄肉のアルミチューブの使用やハイドロフォーミングで断面を異形にする事は、軽量化だけではなく剛性を高くする事にも貢献します。
そして、CSiの特長となっているカーボンバック。
加えてフルカーボンフォークは剛性よりも軽量化と振動吸収性を高める為に採用しています。

特にカーボン製のリアフレームですが、CSiではシートステーだけではなく、チェーンステーもカーボン製です。
当時のロードレーサーでもシートステーのみをカーボン製とする場合が多く、チェーンステーまでカーボンで作っていたバイクはごく少数でした。
CSiがチェーンステーまでカーボンなのは軽さとしなやかさの両立を考えての事のようです。
おかげでCSiは剛性感が有るのに適度にしなりも有って、大径薄肉チューブのフレームに多く見られる「スピードの伸びの悪さ」が有りません。

フレームの後半部分はフルカーボン製。 シートステー(斜めのフレームメンバー)のみカーボン製で、チェーンステー(地面と水平のフレームメンバー)はアルミ製が一般的なところ、CSiはチェーンステーもカーボン製で、高い振動吸収性と軽量性を併せ持っています。
エンドに向かって、キュッと細く引き締まった足回りがエロいです。
フォークはコラムシャフトまでカーボン製で、エンドのみアルミという、フルカーボンフォークを採用。 こちらもエンドに向かって細く引き締まったラインがエロい!

要件3.軽やかで切れのある走行性
要件の1.と2.は、この要件3.を満たすための方法論に過ぎません。
「軽い」と言っても単純に重量の事だけを指している訳ではないんです。
重心位置が高い場合と低い場合では、得られる走行フィーリングは大きく異なりますよね。
軽さの質が大切なんです。
また、「切れがある」ってどんなフィーリングなんでしょうか?

「切れがある。」キレッキレというよりは適度な手ごたえを残したキレな訳ですが・・・CSiは「俺を乗りこなしてみろ。おまえに俺が乗りこなせるのか?」と、乗り手にライディングスキルを要求してくるスパルタンなピュアレーサーです。ですので、普通のスポーツバイクよりも乗りこなすのは難しいかもしれません(じゃじゃ馬を御してライディングするのは至上の喜びですが・・・)。

その、キレッキレのフィーリングは、横方向とひねり方向に遊びが少ない(剛性が高い)フレームでなければ得られません。
でも、重心位置が悪いとキレッキレのフィーリングでは乗るのが怖いだけのバイクになりかねません。
ですから、低い位置に重心を置いた剛性の高いフレームが必要です。

以前、Tyrellのデザインアイコン「スラントフレームテクノロジー」に関して、このブログでご紹介させていただきました。
【Tyrellの自転車づくり スラントフレームテクノロジー】

ひねり方向、横方向に高い剛性が有って低重心なフレームは、スラントデザインのフレームの特徴なんですよ。

キレッキレなのに乗るのが楽しいのはスラントデザインテクノロジーのフレームだからなんですが、CSiはそれだけでもありません。

CSiは完成車重量で8kg前後の重量になりますが、今や8kgの重量って「重くはないけれど、軽さを売りに出来る程ではない。」スペックですよね。
でも、実際のオーナー様やご試乗されたお客様から頂くお言葉は「ものすごく軽い!」というお言葉が一番多いんです。

どうしてなんでしょうか?

「剛性が高い事で反応が素早い。」「低重心で倒し込む方向にモーメントが作用しにくい事から左右に軽く振れる。」このことに加えて、適度な反発力が有る事が大切な要素となっています。

CSiは足回りがカーボン製のフレームです。
振動吸収性を高く取れる事と同時に、適度なしなりと反発性が車体の動きを軽やかにしているんです。
しならない棒よりも、良くしなる釣り竿の方が、反発力を生かして遠くまで仕掛けを投げる事が出来るのと同じ理屈です。
フレームが反発するリズムに合わせてライディングできれば、テクニックを駆使して走るスポーツライディングの神髄を味わう事が出来ますよ。

CSiは非常に剛性が高い大径薄肉のメインフレームに、しなやかで反発性が強いカーボン製の足回りが組み合わさった、ハイブリッドフレームでしか得られない楽しさにあふれるミニベロロードレーサーなんです。

4.美しいシルエット
CSiは廣瀬がデザインしたと先に申し上げました。
ずいぶん以前に「悔しいけれど廣瀬がデザインしたバイクは、みなカッコいいんです。」と吐露した事が有りました。
CSiはその中でも最高傑作なんじゃないかなと、僕個人は思ったりしています。
それは、フレームが織りなす三角形のバランスだったり、その三角形を形どるチューブの太さのバランスだったり、カーボンパーツのなまめかしい曲線だったり・・・。
ごちゃごちゃした虚飾が有るわけではなく、シンプルにフレームの形で勝負しているデザイン。
伸びやかで走りの良さを予感させる佇まい・・・。
自社製品なので、良い所を皆様にお伝えしないといけないのですが、僕個人としては複雑な思いです・・・(笑)。

そして、溶接部分の仕上げの良さ!
実はCSiのフレームはTyrell製品では、最も仕上げに手間をかけているんですよ。

CSiはカーボンの部材をアルミの部材に接着している関係で、KADOWAKIさんの粉体塗装が使えないんです(高温で焼き固めるために、接着剤が温度に耐えられないんです)。
その為に、溶剤の塗料を使用するのですが、溶剤塗料の方が塗膜が薄いので、フレームの凸凹が粉体塗装よりも目立ってしまうんです。
そのせいで、CSiだけは最終仕上げのレベルが1段階高いんですよ。
アルミフレームとは思えないスムーズな接合部分は、CSi最大の萌えポイントだと思います。

各フレームメンバーが接合される
各フレームメンバーが接合される溶接部分を見てください。
溶接されているってわからないでしょ!  アルミ製とは思えないですよね。
BB周辺の複雑な形状もスムーズですよね。
全部、職人さんの手仕事です。

◆CSiのエモーショナル
「軽くて、良く走って、かっこ良い」CSiの特長を簡単に言ってしまうとこうなりますが、その一つ一つの要素をどこまで掘り下げて、小さなことを積み上げるかで、エモーショナルな体験が得られるバイクになるか、その他のそこそこ良く出来たバイクになるかが決まります。

CSiの場合は「軽さ。」と言うキーワードが有るわけですが、単純な重量のお話ではない事は、ここまでお付き合いいただいた方ならご理解いただけると思っています。

CSiがご提供できる唯一無二の体験ってどんなものでしょうか?

「小径車でありながら、その走行フィーリングは本格的なロードバイクに引けを取らない。」
ってことだと思います。

ここでのロードバイクって、ガチな奴ですよ。
ロードバイクではなくって、あえてロードレーサーと表現させてください。
軽いからよく走るとか、そんな簡単な話ではなく、パフォーマンスの限界点を見極めるトライが無いバイクでは決して味わえない、レーシングマシンでしか味わえない走り。

CSiはそんな本格的な走りの楽しさが詰まったミニベロです。
ロードバイクではなくって、ミニベロってところがポイントです。
偏見かもしれませんが、ガチのロードバイクと変わらないロジックと素材で作られているミニベロってどんなモデルが有るでしょうか?

かっこだけのロードバイクでは到達できない、乗り物としての高みにCSiは達していると、僕は思っています。
ロードレーサーなら沢山優れたバイクは有りますが、ミニベロってところがポイントです。

ガチなロードレーサーを気軽に普段使いするのもかっこ良いと思いますが、ミニベロが持っているスタイルって特別な雰囲気が有ると思いませんか?
どこか肩の力が抜けているのに、凄みは感じるってかっこ良くないですか?

ロードレーサーと言えるリアルな走行性が有って、ミニベロの気軽さも持っているのがCSiだと思うんです。

ぬるいバイクではありません。
結構、ガチな乗り味なんで乗りこなすのは難しいと思いますが、そこがまた、たまらん魅力ではないでしょうか。
廣瀬の変態性が色濃く出ているCSi、ぜひお試しいただき共感していただければと思います。

ニューカラーのCSiをご試乗いただけるショップ様は、2021年8月10日現在の情報で下記のとおりです(情報は順次更新いたします)。

千葉県浦安市 街の自転車屋さん believe
街の自転車屋さんbelieve・BROMPTONをはじめ折りたたみ自転車、ミニベロ、ロードバイク、自転車修理もお任せください! (city-believe.com)

◆神奈川県横浜市 グリーンサイクルステーション
折りたたみ自転車・ミニベロ専門店 GREEN CYCLE STATION | 横浜山下町のミニベロ・折りたたみ専門のサイクルショップ (gcs-yokohama.com)


今回はミニベロロードレーサーCSiについてお話しさせていただきました。
クッソ長い文書さ最後までありがとうございます!

それでは、こまめな水分補給を忘れないでくださいね!
くそ暑い日は、走らないで過ごしましょう(笑)
有難うございました!!