【開発ストーリー FCX vol.1 】
Tyrellフリークの皆様こんにちは!!
今回から『開発ストーリーxxxx』と題して、Tyrellの自転車がどんな取り組みから生み出されるのか、Blogとして皆様にお伝えする事になりました。
不定期ですが、ガチで突っ込んだ内容にしますので、是非是非、お付き合いくださいね。
その第1回は、話題のプロトタイプ『FCX』です。
FCXは2017年のサイクルモードにコンセプトモデルとして展示させて頂き、人気が高かった事から製品化が決定したモデルです。
開発決定から既に丸2年が経過しているのですが、どうして時間が掛っているかと言いますと・・・
その時から自社製のカーボンフォークで製品化する事を決めていて、そのカーボンフォークを製品化する為の研究開発、設備の整備などに時間が掛ってしまった事が一番です。
クロモリ製451ホイールのフォールディングバイクとして注目されていますが、もう一つ、完全自社生産のカーボンフォールディングフォークというトピックも有るんですよ。
その辺りは、次回以降に回すとして、今回はまずは『FCXの開発要件』についてお話ししたいと思います。
◆FCXの開発要件
1.ミニベロの既成概念を超えた安定感のある直進性。
2.ダンシング時のさばきの軽さ。
3.衝撃吸収と反発力の絶妙なバランスポイントの実現。
4.シンプルで研ぎ澄まされた「佇まい」。
5.メイドイン讃岐
これらがFCXの開発要件なのですが、要はカッコよくって「何じゃこれ!!」って思わず言ってしまう性能が有って、いつまでも乗っていたくなって、Tyrellの自社工場で作られた自転車って事です。
Tyrellでは創業者の現代表取締役 廣瀬が、プロダクトのチーフデザイナーとして従来モデルを生み出してきましたが、このFCXはTyrellで初めて、廣瀬以外の手で開発が進められているモデルなんです。
担当するのは、プロダクトマネージャーの僕と、若手のチーフウェルダー・・・
「廣瀬以外の人間が、果たしてTyrellファンに受け入れられるバイクを創れるのだろうか・・・」
大丈夫か俺達?
高い走行性能とカッコ良いルックスが無ければ、Tyrellじゃない!!
ですよね~
高い走行性能については理解し易いのですが、「カッコ良さ」と言う主観的な要素を Tyrell というイメージにどう落とし込むのか・・・
僕達が製品開発するにあたって、一番苦心しているのが「カッコ良さ」「美しさ」をどうやって生み出すかでした。
前置きが長くなりましたが、FCXの開発ストーリー1回目はデザインについてです。
◆FCXのデザインコンセプト
何を持って「カッコ良い」「美しい」と感じるのか、それは人それぞれと言えますが、世の中には「絶対的な美しさ」って存在しますよね。
鍛え抜かれたアスリートのボディ、野生動物等々・・・
装飾されている美しさには好みが発生すると思うのですが、無駄をそぎ落として、そぎ落として、最後に残ったシンプルな塊には、誰もが心を動かされる美しさが有ると思うんです。
それを、Tyrellのデザインコードであるスラントフレームで表現すれば、だれもが「美しい」「カッコ良い」って感じて頂けるのではないか・・・
ある時、そう思い至りました。
では、自転車が持っているシンプルな美しさって、何でしょうか?
僕は三角形の美しさだと思っていて、FCXでは三辺のバランスと、フレームワークによって組み合わされる、様々な三角形のバランスを整える事で、飽きの来ないシンプルな美しさを求める事にしました。
イメージしたのは武道の達人が持っている佇まいです。
ただ立っているだけなのに近寄りがたい・・・静かなのに激しさを感じる・・・繊細なのに強靭な意志の強さを感じる・・・「凛とした佇まい」。
佇まい、立姿に美しさが有るバイクが、FCXのデザインコンセプトです。
◆コンセプトに辿り着くまで
上の画像を見てください。
右が最初に作った試作機2G、左が2Gのデザインを整えた試作機3Gです。
2Gは、デザインをあまり意識しないで、走行性能を求めて作られた試作機です。2Gの佇まいは伸びやかさが無くって、少し窮屈に見えてしまいます。
ちょっと野暮ったいですよね。
実は2Gを作る際に、三角形のバランス云々・・・と言う事は意識していませんでした。
細身のクロモリチューブのスラントフレームなら、カッコ良いTyrellのバイクになると安易に考えていたんです。
また、目指す走行性能のイメージが掴めるまでは、フレームのシルエットに意識が行く事も有りませんでした。
ある時、2Gで走っているスタッフを観ていたんですね。
その時に、「あれ~何か2Gは野暮ったいな?」「あんまりカッコ良くないね。」って・・・
初めはその理由が分かりませんでした。
悔しいけれど、廣瀬がデザインしたバイク達は皆、カッコ良いんです。
理由を聞くのは悔しいので、FXやCSi等のバイク達を観察しては2Gと見比べる日が続きました。
自分がカッコ良いバイクだな~って思えるバイクって、同じビルダーさんが作ったバイクと言う事が良く有るんですね。
ブランドが分からない状態の、第一印象でカッコよさを感じている事が以前から良く有って、そのカッコ良さの基準って何なのかな・・・と。
そんな事を、2Gと廣瀬が生み出したバイク達を見比べて考えていました。
で、気が付いた事が、先に書かせて頂いた「三角形のバランス」です。
廣瀬のバイク達と2Gでは、明らかに三角形のバランスが異なります。
そこで、性能を維持したまま、デザインコンセプトに沿って三角形のバランスを整えた試作機が3Gなんです。
◆コンセプトの具現化
上の画像は、3Gと2Gを重ねて撮影した物です。
ホイールベースやトップチューブの位置、BBの高さなどが同じであることは分かって頂けると思います。
一番違っているのが、フレームサイドのクロスメンバー、スラントチューブの傾斜角です。
シートアングルやヘッドアングルも異なりますが、一番の違いはスラントチューブの角度と、シートチューブの太さですよね(ハンドルの高さは勘弁して下さい)。
ちょっと分かり難いですが、シートステーの取り付け位置(シートポスト側)も少しだけ低い位置になっています。
こうすると前後に伸びやかで、低く身構えた様な佇まいになっていますよね。
並べてみると、2Gのトップチューブ(平衡の上管)の方が高い位置に見えるから面白いです。
Tyrellフレームの萌えポイントであるスラントチューブ、その角度とシートステーの角度が、見る位置を変えても違和感がない角度になる様に気を使いました。
2Gから3Gに変更する際、PCでは各三角形の三辺を、ミリ単位で変更して長さと角度を決定しました。
当然、フレームの形状が変わりますから、走行フィーリングも変わります。
それを2Gに近づける為に、何度も乗車テストと試作の繰り返しです。
僕達には凄いシュミレーションソフトも、図面を見ただけで乗り味の微細な変化まで感じ取れる経験もありませんので、作って試すしかありません。
ようやくデザインコンセプトに沿ったフレームになったと自負しています。
製品化までには、新しいフォールディングシステムで試作し直して、性能とデザインのバランスを整え、3Gの佇まいを更にグレードアップする作業が待っています。
何回フレームを作り直さなければならないか・・・
大丈夫か?俺達・・・
果たして予定通り、2020年5月発表のターゲットで進行出来るのか!
経過報告はまた改めて・・・
皆様、FCXにご期待くださいね!!